セラピストにむけた情報発信


学会・研究会報告3−運動学習研究会を終えて



2008年6月6日

第18回運動学習研究会が5月31日−6月1日に開催されました.
今回は担当世話人の大役を任され,院生スタッフ4名+研究室修了生1名とともに,研究会の運営に携わりました.

総勢54名の参加者のうち,11名が理学療法士であり,臨床の方々にも少しずつ研究会の存在が認識されつつあるなと実感いたしました.

研究会の概要は,研究室のホームページに記載いたしますので,ここではセラピストの観点からみて興味深いと思われた研究報告についてご紹介いたします.

●佐藤佑介氏(日本大学)昇段における遊脚の制御
  • 健常者を対象に,段差を1cmずつ変えながら,段差を超える際の歩行パターンを測定した研究.
  • 段差の高さが3cm以下の場合,通常と同じ歩行パターンで段差を登ったことから, 段差としての意識はほとんどないと考えられる.逆に段差が3cmを超えると, いわゆる昇段動作の歩行パターンに変化した.以上の結果から,3cmという段差が 動作方略を決定する上での重要なポイントとなっている可能性が示される. 転倒を引き起こしやすい段差が数cmと言われていることを考えても,興味深い結果である.

●豊田平介氏(塩谷総合病院)成人片麻痺者における身体知覚〜間隙の通過能力からの検討〜
  • 方麻痺患者が,接触せずに通り抜けられる隙間の大きさを正しく判断できるかについて検討したもの.健常成人の場合,隙間が肩幅の1.3倍の大きさかどうかで判断するといわれている.
  • 実験の結果,方麻痺患者の場合,リハビリ初期には隙間が肩幅の1.6倍程度で,また自立歩行が可能な時期では1.4倍程度で,接触せずに通り抜けられるかどうかを判断していた.リハビリ初期には,自分の身体幅が正しく知覚できないため,通り抜けの判断にかなり広い空間マージンをとると考えられる.リハビリテーションによる運動機能回復に伴い,身体知覚の精度も向上する結果,通り抜けの判断が健常者のレベルに近づいたと考えられる.

●倉松由子氏(東北大学)療養高齢者の垂直座位の認識について
  • ベッドでの長期療養が,運動機能だけでなく,身体知覚の機能にも悪影響を及ぼしているかどうかを, 座位持の姿勢認識課題を用いて検討した.
  • 姿勢を前後方向に対して垂直にするよう求めた結果,療養高齢者は健常者に比べて,垂直座位の認識が5度程度ずれていることがわかった.今後,このような認識のずれが運動に悪影響を及ぼすことかが検討されれば,ますます興味深い知見を提供できると思われる.


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